吉中 媛香

主演嬢優たち


かつてこの国にはキャバクラなるものがあったそうだ。
 
この劇場酒場は、日本各地の繁華街で猛威を奮い、殿方は夜な夜な劇場に繰り出し、マンスプレイニングを心ゆくまで楽しんだという。
控室では煌びやかな衣装を纏った演者たちが、化粧直しをしたり公演の知らせを携帯端末から発信する。客入りの合図が鳴ればたちまちそこは劇場となった。リハーサルや台本はなく、毎日がアドリブの一発本番だった。
演者たちは、容姿や見なりに対して常に気を遣っていた。
体は細くあればあるほど喜ばれた。目は飛び出そうなほど大きい方が可愛げがあるとみなされ、カラーコンタクトという、黒目を大きく見せる色付きのレンズを目の中に入れるのが主流であった。
彼女たちは毎晩、踵が細くて高いピンヒールを履いて、客の待つホールへと歩みを進めていく。安定を失ってつまずかないように、細心の注意を払いながら。