楢井 真琴

笑ってほしい


コミュニケーションの取り方は、生まれ育った家庭環境の影響を受ける。私には、無自覚のうちに自分よりも相手や周りの事を優先して動いてしまう癖がある。そんな自分を投影する存在として、イヌの作品を作ろうと思った。これらのイヌは餌も散歩も必要とせず、糞もせず、ただただ尻尾をふり続ける。
人を癒すための究極の愛玩動物を「自分を脱ぎ捨ててこうなれたら良いのに」と本気で願いながら制作していた。
制作を終えて、なりたかったイヌに囲まれてみたら、なぜか懐かしい感じがして、自分の育った環境を思い出した。誰にも迷惑をかけないイヌたちを撫でていると「こうならなくてもいい」という思いと、「こうなりたかったことも否定しなくていい」という思いが共存して、気持ちが安らいだ。捉われた気持ちがほぐれていった。
これからは、自分の声に素直に耳を傾けてみたい。そんなことを思っている。